14歳の少女に結婚を命じたロシア兵

ウクライナ Ukraine

写真左母アンナ、写真右、娘のカーチャ

16歳のカーチャは、僕のヒーローアカデミアや鬼滅の刃等、日本のアニメが大好きな、穏やかな少女だ。カーチャは2022年、449体の遺体が発見された集団墓地のある、占領下のイジュームで、ロシアの司令官に結婚を命じられた。

写真、カーチャの母アンナ、背景はアンナの勤務する幼稚園

カーチャの母アンナは幼稚園の先生だ。子供たちは無邪気に、毎日想像しないようなことをする。そんな子供たちと過ごす日々が楽しくて仕方がなかった。戦争が始まり、穏やかな日々は破壊された。ロシア軍の爆撃により、アンナのアパートの窓ガラスとドアも吹き飛ばされた。3月1日、アンナ親子は、幼稚園にある地下シェルターへと避難した。常に、150人以上の人たちが、このシェルターに居て、一つのベットで、5人が一緒に寝た。電気もなく、基本真っ暗だった。アンナ親子は家が破壊されたため、このシェルターで9ヶ月過ごした。

写真、アンナたちが9ヶ月過ごした幼稚園の地下シェルター

ロシア軍にイジュームが占領されると、ロシア兵は、何度も、シェルターがある綺麗な幼稚園に住もうと訪れたが、子供が大好きなアンナは、「ここにはたくさんの子供が滞在しているわ。外では爆撃でたくさんの人が死んでいる。子どもたちの身を守るために、私たちはここを離れるわけにはいかない。あなたたちはここに滞在しないで。お願い」そう、アンナはロシア軍を説得した。アンナの説得のおかげで、ロシア兵は幼稚園に滞在せずに、150人ほどの住民は、安全な幼稚園に滞在することができた。アンナは勇気のある、強い女性だった。

鬼滅の刃、僕のヒーローアカデミアが大好きな、16歳の少女カーチャ。背景は自宅に貼られた日本のアニメのポスター

ある日、アンナとカーチャ、そしてカーチャの祖父母は、4人で幼稚園の庭にある、キャンプファイヤーで調理をしていた。そんなとき、2台の車で、7〜8人のロシア兵が幼稚園にやってきて、幼稚園内をチェックし始めた。40代の、他のロシア兵たちに指示を出している、司令官だと思われる男が、アンナとカーチャの近くに腰掛け、カーチャを魅入るように凝視すると、アンナに語り始めた。「なんて美しい娘だ。お前の娘は、とても美しい。俺の息子の嫁になれ!!」。ロシア兵の司令官と思われる男が、当時、わずか14歳だった娘に、冗談でなく、真剣に語りかける姿に、アンナは唖然としていた。ロシアでも、ウクライナと同じで、成人するのは18歳のはずだ。わずか14歳の娘に、この男は何を言っているのだろうか。アンナの母、カーチャの祖母は、呆然とするアンナと司令官風の男の間に割り込んだ。「それは無理よ。孫娘は、まだわずか14歳の少女にすぎない。結婚なんてできるはずがないわ」。カーチャの祖母は、ロシア兵に怯むことなく、そう、強く口にした。「カーチャの様子が変だが、どうしたんだ?」カーチャは長引く占領で体調が悪く、風邪気味だった。そんな、カーチャの様子を見て、司令官風の男は尋ねた。カーチャの体調が悪いと伝えると、司令官風の男は、車からインフルエンザの薬を持ってきて、カーチャに渡した。しかし、カーチャは別にインフルエンザではなかった。その後も、司令官風の男と、ロシア兵たちは、物資の配給などで何度も幼稚園を訪れ、その度にアンナに、「カーチャはどうした?元気か?俺の息子の嫁になるのはどうだ?」と何度も聞いてきた。アンナは若いカーチャがロシア兵と接触するのに危険を感じ、ロシア兵がくると、カーチャを隠した。そんなロシア兵たちは撤退し、破壊されたアパートも修理され、カーチャは9ヶ月ぶりに家に戻り、自分たちだけの空間でゆっくりできて、とても嬉しかった。毎日、避難先から帰ってきた友達と散歩をして、アニメや他愛もない話ができて、カーチャはとても幸せだ。ちなみに、占領下イジュームでは、多くの夫婦が離婚し、離婚した女たちは、ロシア兵について行って、ロシアに行ってしまったのは、また別のお話である。